ショートエッセイ いきもの語り

年老いた猫が寝たきりになり、見送りました。3年間このブログを開くことを躊躇っていましたが、コロナ禍で感じ続ける生きていることの奇跡と感謝をあらためて綴ってみようと思います。

青い星

子どもの頃、「青い鳥」という物語の何に惹かれたのかと考えています。 幸せの青い鳥はすでに手の中にあった。 という結末は、様々な経験を経てこそ理解できるのではないか。そう思うからです。 でも、青い鳥というモチーフは、子ども心に沁みていました。「…

キンランとガビチョウ

レッドリストに載っているキンランは、 他の樹木と菌類を共有しないと生きていけない花なのだそうです。 そんな話を聞いてから、根や菌で会話をする植物の世界が俄然豊かに思えるようになりました。 盗掘も多いので、この花をどこで見かけたかを、語ることが…

鉢の中で

サクラの号令で、待っていましたとばかりに足下でも一斉に花が咲きました。 ヒトリシズカという名前の花も、ひっそり咲いています。 春を待っていたのは私も同じです。 今年は特別な理由がありました。 ベランダでバラを3鉢育てているのですが、そのうち1…

目覚めた時に聞こえるのは

何年前のことでしょうか。 目覚めたら小鳥の声が真っ先に聞こえる、 そんなところに住めるのが幸せ。 と、自分なりの幸せの定義をひとつ決めたことがあります。 あ、申し訳ないけれど、この場合「小鳥」にカラスは含みません。 今朝はスズメが仲間を呼んでい…

ぷっくりヒヨドリ

先に居たのは、私の方です。 3m後ろの枝にとまったのは、あなたの選択です。 左後ろに気配がするので振り返ると、ヒヨドリがぷっくり膨らんでぼ〜っとしていました。 カメラを向けても気づかないのか、ぼんやりしているので、思う存分観察させていただきまし…

鳥の巣 Bird's Nest

鳥の巣が落ちていました。 こぶしぐらいの大きさの、小さくて、軽そうな巣です。 強い北風が樹上から吹き飛ばしたのではないかということです。 メジロの巣、なのだそうです。 梅の花が少ずつほころび始めるこの時期、活発に動いているメジロ。何をしている…

水色ダウンの少年

電車の扉の端に立っていると、 きれいな水色のダウンを着た中学生ぐらいの男の子が、同じ扉の反対側にやって来ました。 顔の真っ白な、線の細い少年です。 この時期、半ば向かい合わせになるのはやや気になるので、見るとはなしに、なんとなく様子を伺ってい…

小鳥で世界を見る

鳥がいる。というだけではダメなんです。 なぜそこにいるか考えたことがありますか? と話している人がいました。 今年、冬鳥の渡りが遅い。というのは、遅いのではなく、どうやら個体数が少ないのだそうです。 東京の夏が長かったからだけではなくて、実は…

冬のココココ

夏はうっそうとした木々しか見えない近所の洋館の庭が、 冬場は恰好の野鳥観測ポイントになっています。 でも去年ほどあまりいろいろ見かけないなと思っていたら、野鳥に詳しい人が、 「今年は遅いみたいですよ」 と、渡りが遅れていることを教えてくれまし…

越冬するモノ 春待つ気分

2か月ぶりに近所(23区内)の「森」に行きました。 足元は枯葉ばかりになっていて、見上げれば夏よりずっと鳥の姿が目につきます。 これまであまり気にならなかったワカケホンセイインコが複数いたので、 「ワカケってこんなにいましたっけ?」 と鳥に詳しい…

われなべにとじぶた

折れ曲がって道にはみ出たダリアの花を ヒビの入った湯飲みに活けてみました。 ダリアは、数年前、近所の、野菜や米も扱っているあまり主義主張のない地味な花屋の店頭に、満開の状態で苗が売られていたので買ってきたもの。 湯飲みは、30年ほど前、駅前の食…

和ばら、とともに

バラの花束が到来して3日。 つぼみだった数本が、想像もできなかった姿に変わってきました。 生き物は、変化が、楽しい。 そのバラを作っているご本人に、 あなたのバラは強いそうですね。 切り花にしても何日も持つと評判を聞いていますが。 と声をかけると…

らしくないバラ

要冷蔵で届きましたよ。暑い日の午後3時に。つぼみがもっと開いたら、違う顔を見せてくれるのでしょうね。暑い暑いとうだっていたのに、この花の到来で一気に元気になりました。これ実は、全部バラ。バラらしくないバラを作っている農園から取り寄せました…

ミンミンの恋?

今年の夏は、セミとのご縁あり。 でも、もうそれも終わります。 8月最後に出会ったのは、こんなセミたちでした。 最初は2匹いるとは知らず、飛べばいいものをなにを歩いているのだと、太っちょのミンミン君を見ていたのですが、 そういうことだったのか〜と…

外来の蝶

影絵のように美しい蝶が突然目の前に現れました。 このアカボシゴマダラ、 関東では1990年代より前は見られなかったのだとか。 外来種と知るといきなりありがたみを感じなくなるのはどうしたことでしょう。 在来種を駆逐しているわけでなければ、素直に受け…

飛び立つ覚悟

部屋で羽化したセミが羽のバランスがよくない、飛べないセミだったので、 どこかの木に帰そうと、セミを連れて歩き回りました。 これは?という木に放っても、どうもあまり乗り気ではないようです。 近所を一周して戻ると、すぐ近くにやたら抜け殻が多くつい…

セミの羽化 はじめてのこと

今年は蝶ではなく、蝉。 3日前、夕方ちょっとした出会いがあったので、両手を交互に上らせながら連れ帰ってみました。 羽化したては「緑色でとても美しい」と聞いていたので、見てみたくて。 夕飯後にじっくり観察と思ったら、 羽化は、びっくりするぐらい…

モンシロチョウの背中は青い

今年4度若芽を天ぷらでいただいたご近所のフキの群れ。 ああ、もう花が咲いちゃったな〜あの味は終わりだな〜とその一群を見ていたら、デジカメを向けている人がいる。 さほど珍しくもない光景なのに何をやっているんだろうと見ていると、 その人は私の視線…

都会にフクロウ

コロナ禍の一年。 圧倒的に自宅に居ることが多くなったことと引き換えに ご近所発見の機会も増えました。 その中で最大の発見が、この大きくて立派な鳥がすぐ近くにいたということです。 そもそも自分の住む街にこの鳥が来るような保護林があることなど知ら…

世界は美しく仕組まれている

友達と会うこともままならない毎日、 新しい刺激がないかと思いきや、 すぐ近くに、楽しいこと、どきどきすることが山のようにあるようです。 公園のベンチに座っていると 一羽のツグミがこちらを気にして近づいたり離れたり。 単眼鏡で見てみると、見事に組…

冬の海辺

ちょっと好きな失恋ソングがあります。 あなたと一緒に来なくても もともと私はこの海が好きなの そんな意味の歌。 その歌が頭に浮かぶのは、鎌倉の材木座海岸を歩く時です。 特に、冬。 失恋などしなくてももともと冬の海が好きなんで。 かつては長靴に履き…

樹木の神秘

空を見上げるのは自由です。緊急事態でも。数日前の強風もあり、頭上に折れた枝がないか、落ちて来る危険がないか確認しようと今日は上を見ながら歩きました。日に当たり細い枝がキラキラ輝く空向きの景色だけを見ていたら、「ここはヨーロッパだよと言われ…

クロアゲハにありがとう

生まれて、ちょうど2週間。 静かな朝の光の中で、 蝶が逝ってしまいそうです。 箱の中で行方を失っていました。生きるという行方を。 大好きな餌に目をくれず 飛ぶこともせず 何かに抗っていました。 足を畳んだまま翅を動かしていたけれど その翅の動きも…

冬に羽化

え?いま? と、思わせられ続き。 11月中旬、レモンの葉先で頭を左右にゆらゆら振っている暢気な幼虫を見つけた。 え?今?もうすぐ冬だよ! ということで、緊急確保。 無事サナギになったので安心して越冬態勢に。 と思ったら、12月下旬のある日、黒っぽく…

根を張る

ふかふかの土に、ドングリが根を伸ばしていました。 ドングリは深く根を張った後に、芽になり幹になっていく部分を作っているようです。 その姿を見て 自分の体を支えられると自信を持ってから 地上から上の部分を作っていくんだね、 と、皆で話していました…

誰かが見ている

フリーランスで自宅で仕事をすることが多い中でのコロナ禍。 自分で作った家族もなけりゃ、同僚もいない。 このまま人に必要とされないまま生涯を終えるのかな、とマジに思う。(ことが時々ある、) 今年は部屋に蝶のサナギがいる日が多くなった。 今いるの…

キノコは郵便屋

誰かに願いを届けたい時は、 大木の幹に触れて思いをその木に伝えるといい、と聞いたことがあります。 その木の根に隣の木の根が触れて、 地球上ではそうやって、誰かの近くの木まで思いが届けられるというのです。 同じような話がキノコにもあることを最近…

私の居場所

久しぶりにジョギングをしてきました。 家の近所にある小川は、昭和50年代にはコンクリートで護岸された薄暗い生活排水のための川でしたが 今は、たくさんの植物や野鳥や魚が集う、地域で大切にされている場所に生まれ変わっています。通るだけで楽しいジョ…

アゲハの少年

長い梅雨の間、 名の知らない小さな虫たちが葉っぱの裏にいろいろな仕掛けをして生き延びようとしたようで、 おかげで、梅雨生まれ梅雨育ちのアゲハは サナギになるのが精一杯。 羽をつけることができませんでした。 ある日、梅雨生まれさんのエサにと切り取…

すずめのお宿

お宿がそこにあると気づいてしまいました。 覗いてごめんと思いつつ、あちらもこちらを眺めていたのでアイコでしょう。 野生に生きる動物は、目が合うと心臓に大きく負担がかかるほど緊張するのだと言います。 それでも鳥たちは目を合わせながら2mくらいまで…