ショートエッセイ いきもの語り

年老いた猫が寝たきりになり、見送りました。3年間このブログを開くことを躊躇っていましたが、コロナ禍で感じ続ける生きていることの奇跡と感謝をあらためて綴ってみようと思います。

クロアゲハにありがとう

生まれて、ちょうど2週間。

 

静かな朝の光の中で、

蝶が逝ってしまいそうです。

箱の中で行方を失っていました。生きるという行方を。

 

大好きな餌に目をくれず

飛ぶこともせず

何かに抗っていました。

 

足を畳んだまま翅を動かしていたけれど

その翅の動きも小さく小刻みになっています。

いつもならこの時間、

箱から飛び出して窓辺に向かうのに

今日は箱の中でどんどん静かになっていきます。

 

そして、

体を震わせて、逝ってしまいました。


彼女が部屋を飛ぶ時に翅が立てる枯葉にようなかすれ音はもう聞こえません。

部屋が、

静かに、静かに、なってしまいました。

 

青い空へ向かうことも

恋をすることも知らないままだったけれど

争いを知らない生涯だったのは

せめてもの幸福だったとして送ってあげたいと思います。

 

関連動画はこちら

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元気だった頃 お腹いっぱい餌を口にしていた