ショートエッセイ いきもの語り

年老いた猫が寝たきりになり、見送りました。3年間このブログを開くことを躊躇っていましたが、コロナ禍で感じ続ける生きていることの奇跡と感謝をあらためて綴ってみようと思います。

やっぱり世の中知らないことばかり

このキノコは何という名前ですか?
と聞くと、
詳しい方からはこう返事がきます。
写真だけではわかりません。
少なくとも傘の裏側を見せてください。
ですが、このフィールドで年2回調査を行っている方々によれば、
「ここで採取されたこの手のものはウグイスハツということにしています」
とのことなので、
ならば「ウグイスハツ」と、私のメモには記しました。
日本の図鑑にもまだ載っていない“新種”だそうです。
傘の表が薄緑色のきれいなキノコです。
キノコにはいろいろな虫がやってきます。
いちばん目につくのは雑食性のダンゴムシ。
モデルさんとしてはあまり好ましくないので、
最近は、ちょっとごめんね〜と言いながら、キノコにカメラを向ける時間はキノコから降りてもらうようにしています。
この時も、
ごめんね〜と払い除けた「虫」のひとつが少し白っぽかったので、メラニン色素の少ないダンゴムシかと思っていました。
家に戻って確認すると、
小さな小さなカタツムリ。生まれてそんなに時間が経っていないのでしょうか。
すぐ目の前にいたものが何なのか確かめようとしていなかった。まだまだだな、自分。
と思いながら、よくぞこの時ここにいてくれたと、出会いに感謝したりして。
キノコの子実体を食べて、体内に取り込んだ胞子を離れた場所に連れていくのだそうな。
キノコにとっては風と同じ役割をしているんですね。
ん?待てよ。カタツムリの方はどうやって子孫を残すんだ??
いつもながら思います、世の中知らないことばかり。

ウグイスハツかな

名前がつなかない、それがいい

このキノコの名前は専門家でもわからない
と、決まりました。

名前のつかないキノコ
キノコの大家がおいでになって、このあたりにどんな種類のキノコがあるか、
1年に2回調べています。
私は珍しいキノコとの出会いを楽しんでいるだけなので、
採取しての調査の邪魔になると、調査隊のみなさんとはいつも別行動をしています。
そして、調査を終えた方々に聞きまくるのです。
このキノコの名前は?
この数年、キノコを見かけると胞子を飛ばしていないかとりあえず調べてみます。
黙ってそこに存在するものがほんとうに生きているのかを確認しないと気が済まない性分なのかもしれません。
このキノコたちは、台風を迎える前の雨の中、集団で生きてますよ〜と訴えていました。
調査後の方にこのキノコの名前は?と尋ねたところ
 
名前がつかなかった
 
と返事がありました。
決して新種というわけではないのでしょうが、図鑑に載せることも難しいものがキノコの世界にはまだまだあるようなのです。
そう聞いて、どこかホッとしています。
人間の手に負えないもの、知らない自然物が地球上にはいっぱいある。
それが面白いんです。

失ったことに気づかないということとホタル

毎年梅雨のはじめ頃になると、

都内の自然保全地域でホタルの観測をしています。

周囲の街頭や民家から漏れる強い光を遮るために一部に紗幕を張るので

関係者以外の方の楽しみというわけにはいかないのが申し訳なく残念です。

それでもほんの数匹外に飛び出ていくものがいて、

柵の外から時々歓声が聞こえます。

 

ホタルの映像をFacebookにあげると、

80代の知人が、

50年前に子どもたちと真っ暗な中、ホタルを見に行ったことを思い出した、

とコメントしてくださいました。

私も、親の故郷の小川に、いとこたちとホタルを見に行ったことを覚えています。

私たちはいつ周りにあったはずのホタルの光を失ってしまったのでしょう。

自分の体の周囲をホタルが飛び交う体験など記憶しないまま大人になる人が普通の時代なのですね。

 

ホタルは、もしかしたら人として以上に、

生き物として失ったものが多い日常を気づかせてくれる存在なのかもしれません。

こんなに美しい生き物を周囲から失くしてしまうというのは、小さな光の話ではなくずっと大きな話なのかもしれません。

ホタル2026



 

 

正解のひまわり 母の日に

母にはなれなかったし、
母とは特に子どもの頃あまりいい思い出がなかったので
毎年この日は少しだけどんよりするのだけど、
街は楽しそうなので、
お花屋さんに立ち寄って、
明るい色の花をちょっとだけ買ってみた。
正解。
花があると明るくなる。
いろいろね。
母が留守だったので、居間の入り口に向けて飾っておいたら、帰ってきたらしく、
あら!
と嬉しそうな声が聞こえる。
正解。だったらしい。
失敗ばかりじゃないんだよね。
いろいろね。

ひまわり

アオゲラと、心の内での丁々発止

小雨が降っていました。
天気の変わり目はいつもと違う生き物に出会えるチャンスです。
と言っても、そうそう珍しい姿を拝めるものでもありません。
狙っていたサワガニには出会えませんでした。

でもこの日は
アオゲラが、ずっと同じ場所で高い声をあげているようだったので、砂地化している急斜面が泥になる前にと、上ったり下りたり。アオゲラのいる木を見つけようとしましたが、鳴くのが
十数分に1回程度なのでなかなか木の特定ができません。
ドラミングもしていないし。難しい。。。
ようやく探し出せたのは、いちばん上の大きなミズキ。
新しい穴で何か作業をしていた様子。
私が顔を出すと、サッと穴から外れて、葉の陰に隠れました。
でも、ずっとそこにいるので、
こちらも顔が見える場所にそっと体をずらして、
15分ほどじっと見つめていました。
何もしないから安心してね〜〜〜。
目の前で鳴いてくれないと帰らないからね〜〜〜。
と伝えながら。
ようやくカメラの前で鳴いてくれたので、ありがとうと言って崖をくだっていきました。

そんな上り下りの苦労をしなくても、普通の人が出入りできる公開施設のテラスから穴が見えそうだったので、
崖を下って、階段を上がり、大回りをしてテラスに向かったら、
さっきはすぐ目の前にずっといたくせに、誰か来た!と察して十数メートルも近づけさせてくれず、スッと飛んで行ってしまいました。
同じ目線の高さに来るものは、怖いのでしょうか。
そんなところで、安心して子育てができるんでしょうか。
こちらとしてはしばらく観察できそうなものを見つけられて嬉しい限りなのですが。

アオゲラ

 

フクロウ シーズン に想う

今年もまた、彼女たちがやってきました。
ひと月半、なかなか落ち着いてくれないので、今年は無理かと思ったのですが、
一昨日あたりから頻繁にやってきては、
頻繁に鳴く(オスメスで鳴き合う)ようになりました。
今年は去年よりもっと暑くなるかなさぁ、
早く産まないとしんどいよ〜
という人間の心配はよそに、
おそらく来週か再来週には鶏卵ほどのつるつるの卵が巣箱の中に
見つかることでしょう。
気候変動があっても、まだ生きものたちは何とか生きています。
ただ心配なのは、近隣の樹木がバタバタと倒れていることです。
吸い上げられるだけの水が途切れると、上から引き上げる力が伝わらなくなるので、
その後に水がきても、もう遅い…
手遅れにならないように、
それがあるうちに、次の手を打たなくては。

フクロウ(ウラル)

アゲハの学校

急に気温が高くなった今日は、あちらこちらにナミアゲハの姿を見かけます。
我が家のレモンの木にもさっそくやってきました。
もう産卵?
それとも、下見?
新設された公園には、小さなアゲハがいました。
おそらく普通サイズの7分の5ほど。
ここはヒトが通るから、危ないよと追ってみたものの、何度も道に戻ってきます。
飛べないわけではなさそうです。
広葉樹の花がたくさん落ちた湿った場所にやってきます。
昨日の雨で「花」の何がしかが溶け出して、
舗装路(雨が染み込むような構造になっている)の隙間に流れ込んでいるのか。
それがどうも気に入っているようです。
数ヶ月前、アオゲラ(キツツキ)が、自治体放送用の鉄塔に止まってドラミングをしていました。
拡声器がついているので、周囲にドラム音が大音量で鳴り響いていました。
その話をしたら
「ちゃんと学校に行かなかったのかねぇ」
と感想を言う人がいました。
キツツキの学校があると、面白そうです。
小さなアゲハはアゲハの季節が始まったばかりで、学校なんて絶対に行っていないはずなので、
本能のままに、木の花スープに夢中になっていたのでしょう。
それを他のアゲハが見て真似をし始めたら、
そこに学校が誕生するのかも。
と、ちょっとおかしく(面白く)なってきました。

小さなアゲハ