ショートエッセイ いきもの語り

年老いた猫が寝たきりになり、見送りました。3年間このブログを開くことを躊躇っていましたが、コロナ禍で感じ続ける生きていることの奇跡と感謝をあらためて綴ってみようと思います。

天国のカフェ@何もない島

天国みたいなカフェにひとり。ぼおっと水平線を眺めていました。 オーナーの女性がその視線に気づいたのか、 あの向こうの白波が立っているところに、昨日はクジラがいたんですよ。 と教えてくれました。 この珊瑚に囲まれた島には、何もありません。 それで…

オオタカも住宅難?

今週、偶然オオタカを見かけました。 都内住宅街の真ん中にある自然保全地区です。 2日続けて姿を見かけ、しかも2日目はつがいだとわかったので 今朝もその姿がないか確かめに行きました。 春の営巣時期なので。 朝から暑すぎ。いないかもと思って待つこと…

お裾分け

久しぶりに午前の鳥探索に出かけ、 なんとか冬鳥の季節に間に合ったと ウキウキしていた帰り道、 1時間半ほど頭の中が、鳥、鳥、鳥、だったので 電線に止まっている鳥にも意識が向いて、 ああ、あれはムクドリね、 なんて目を向けると… 雨などなかったはずな…

お届けもの

お荷物です。と、郵便屋さんがやってきました。 何かを買った覚えもなかったので、何だろうと差し出し人の名前を見て思いました。 あ、届いたんだ。。。 荷物が私に届いたのではなく、 私の思いが会ったことのないその人に届いた。 そう感じたのです。 結構…

ニホンミツバチの門番

ミツバチがかわいい。 と、旧い友人が語っていた。 うん。「自然派」(とくくってしまうのは好まないが)の人たちがミツバチを大切に思っているのは知っている。 でもね、怖いじゃない。 針持ってるし。集団でいつ襲ってくるかわからない。 花をさがす丸っこ…

旅するキノコ

傘を持つ、私たちがキノコだと思っているものは、子孫をのこすためにつくった形。 このコキララタケは、その子孫を残す形はほんの数日で消えていってしまうのだとか。 私がすぐ近くにいたほんの数時間の間にも、胞子を飛ばしていたかと思えばすぐにその力を…

地球の楽しみ

キノコにはまったらおしまいだ。笑 と思っていたので、できるだけキノコを見ないようにしてきました。 種類が多く違いが微妙で、他の植物との関係なんか考えはじめたら、まじめに取り組むには一生かけても追いつかない。 とわかりきっていたので。 でも、森…

飛んでいけ

玄関前のレモンの木にアゲハが卵を産みにきたので 卵がいくつもついた葉を部屋の中に持ち帰りました。 いくつも、なのに、孵化したのはひとつだけ。 シャープペンシルの芯みたいに細くて小さい子が出てきました。 それからひと月弱。 今朝、無事羽化して、つ…

見えなくても、生命

ここで、14年ぶりに咲いたそうです。 1本だけ。顔を出しました。 ツリガネニンジンという植物です。 14年間、地下で何をしていたんだろうね〜。 と、みなさんの声。 いや〜、14年前からこの花がここにあった記憶があるなんて、みなさんの方もたいしたもんで…

VIVA YOUのフレーム

近所に、やる気のない時計店があって。 小さな店だけど、めちゃくちゃ好立地にあるので、背筋のしゃんとしたお年寄りが長年経営している敷居の高い店なのだろうと思っていた。 数年前置き時計の電池交換に仕方なく入ってみたら、 意外にもちょっとロン毛の40…

雨上がりはキノコの日

今日はキノコの日。 と言っても食べるわけじゃなくて。 雨あがりの森ではおもしろいキノコに出会えるはずと思っていたけど、 こんなおかしなものが土の上でコロコロしているとはドッキリ。 「フクロタケ」って小学校で習ったような気もするが、 エリマキツチ…

ネジバナは幸せの花

ネジバナを見つける幸せというものがあるようで、 ネジバナが咲いているよ、みんなに教えてあげなきゃ、 なんて会話が先月繰り広げられていました。 ほら、砂糖菓子とかガラス細工みたいでしょ、 とクローズアップで撮った写真を見せてくれました。 私も、と…

オニヤンマ 羽化しました

トンボの羽化って難しいんですよ。 と、美容師さん(私の担当ではない人)が、髪を切ってもらっている私に声をかけてきた。 その人にとって私は(私にとってその人も)「羽化友達」なので、会話といえば蝶やセミの羽化の話になる。 トンボの羽化は、水からあ…

木の花が少し早くて

桜も早いけど 木の花がみんな早く開いて。 風が実を結ぶ手伝いをしてくれるといいのだけど、 虫にはまだ少し早い。 そんなことがちょっと気がかりです。 アカシデの花も早いらしい。 いつもなら一緒に開く葉の陰に隠れていたのかな。剥き出しの花が目につき…

働く小鳥

鳥たちの恋の季節です。 キジバトの男子が女子に首を振ってアプローチをしていたり 電線の鳥たちが2羽ずつきれいに分かれていたり。 おやおやと微笑ましく見ています。 一昨日、公園の高い樹木のてっぺんに不思議なものをみつけました。 カマキリの卵にして…

一緒に

お年寄りのご夫妻が手を繋いで 黙って電車が来るのを待っていました。 ずっと以前ひとり旅をしていた時、奈良県のある駅で、向かいのホームに見かけた光景です。 当時はそんな様子が珍しく、微笑ましく心に残っています。(今ではたまにいらっしゃいますよね…

晩秋こそ

木の葉が光を透す季節。 舞い落ちた枯葉を一枚一枚かき分けて頭を出すキノコ。 剥き出しになった枝の間から鳴き声を届けてくれる小鳥たち。 都会にぽつんと残された雑木林では、秋そしてどんどん深まっていく冬こそ、地上に生きているモノがたくさんあるのだ…

主人を待つ薔薇

私たちが手入れをしている住宅街の小さな森の中でも なかなか足を踏み入れない急斜面があります。 冬の中にこっそり隠れている生き物を探しに急斜面を上ると、周囲の景色に似合わないピンク色の薔薇がたった一輪咲いていました。 聞けば、一輪だけが細く伸び…

ど根性バタフライ

葉が落ちると、隠れていたモノが見えてくるので、住宅街にある100×300mほどの小さな「森」で宝探しが始まります。 と言っても、宝はなかなか現れず、 去年はメジロやカラスの古巣、カマキリのたまごぐらい。 でも、月4回しか入れない場所なので、毎回なんと…

人生を変える人

つい先日、日比谷の大銀杏の下で、ひとまわりほど年上のある女性に会ってきました。 どうやら人にはそれぞれ自分の生き方を変えた人が幾人かいるようで、私にとって彼女はそんなひとりです。そしてその縁にも不思議なものを感じます。 かつて、その人が自ら…

種子という名の生命劇場

この時期は、 虫の音も小さくなり、鳥の声は聞こえどもその姿は葉に隠れていて、 足下でかさかさと鳴る落ち葉と 光を透過し始めた葉の向こうから届く木漏れ日くらいしか楽しみがなく、 森に行くのをやめようかな〜 なんてちょっと思ったりしてしまいます。 …

虫の幸せを思う

擬態、ということが多くの虫たちに仕組まれています。 ここまでがんばっている擬態にはなかなかお目にかかれませんが。 アケビコノハという名のガの一種。 全身枯葉に似た姿で、枯葉にじっとしがみついていました。陽が傾きはじめた頃だったので、もう眠りに…

ダリアの顔

数年前の母の日に、ほんの数百円で買ったダリアの苗がたくさん花をつけています。 母が大切に育ててくれているからでしょう。 小さな路地沿いにこれでもかと咲き誇っているので、 数本を切って部屋に飾ることにしました。 どれを部屋に連れていこうかとじっ…

心地いいヒョウ

少し帰宅が遅くなった。 人気の少ない住宅街のメイン通りを10分ほど歩き、もう直ぐ家が見えて来る、という駅から2つ目の信号のある交差点に、4、5人の人集りが見えた。 交通事故でも? 私も何か手伝うべきだろうか。きっと無視もできない。と思ううちに、現…

厳しい銭湯

地方ロケの1日目が終了。今夜はバラ飯(※)の自由行動。 思い思いに街に繰り出していく中、もうひとりの女性スタッフと、銭湯にでも行こうかということになった。 そうだね、旅の疲れもあるし、この先もまだロケは続くし。広いお風呂にゆっくり入ろうか。で…

ふたご蝶

急に寒くなったので 我が家のレモンの木に取り残されていた幼虫たちを緊急保護。 翌日には2匹ほぼ同時に蛹化活動へ突入。 同じ場所を選んでまずは無事、さなぎオブジェとなりました。 兄弟(姉妹)なのでしょうか。 蛹化場所を探しに探した挙句、 同じタイ…

一年草の愛

一年草と聞いていました。 昨年、友人との待ち合わせの時間つぶしにぶらりと入った植木屋で衝動買いしたオジギソウです。 ほんとうに一年でさよならなのかと、冬枯れしても、春になって芽が出なくても、鉢を植え替えることなく放置して見ていました。 景色が…

土のなか

雨が降ると「どうでもいいこと」が気になります。 サワガニは今頃のびのびと、人気のない「森」を闊歩しているだろうか。 この雨が止んだら、トカゲは身を潜めていた場所から這い出して、また日向ぼっこをするだろうか。 そんな姿を見たいものだ。と。 そう…

踊りませんか?

2か月ぶりに森に入ると、あちこちからshall we dance?の声が聞こえてきました。つくつく男子も、つくつく女子に僕と踊りませんか?と手を差し出しています。じっと立ち止まってそんな様子を撮る私には小さな虫たちが多数かゆそうな音でshall we dance?と耳元…

青い星

子どもの頃、「青い鳥」という物語の何に惹かれたのかと考えています。 幸せの青い鳥はすでに手の中にあった。 という結末は、様々な経験を経てこそ理解できるのではないか。そう思うからです。 でも、青い鳥というモチーフは、子ども心に沁みていました。「…