ショートエッセイ いきもの語り

年老いた猫が寝たきりになり、見送りました。3年間このブログを開くことを躊躇っていましたが、コロナ禍で感じ続ける生きていることの奇跡と感謝をあらためて綴ってみようと思います。

飛んでいけ

玄関前のレモンの木にアゲハが卵を産みにきたので

卵がいくつもついた葉を部屋の中に持ち帰りました。

いくつも、なのに、孵化したのはひとつだけ。

シャープペンシルの芯みたいに細くて小さい子が出てきました。

 

それからひと月弱。

今朝、無事羽化して、ついさきほど羽ばたく練習を終えたようなので屋外へ帰しました。

 

あんなにたくさんの卵の中からたったひとつ生まれた命を

寄生されていないかはらはらしながら見届けた日々。

サナギを作ったのが周囲につかまれるものがない場所だったので

翅を乾かし終えるまで、緊張感が尋常じゃなかった。

あんなに必死に母蝶が産んだ卵が飛び立っていけるようになるまで

いくつもの難関があって、そしてようやく飛び立つのですね。

もうすぐ冬がやってくるのに。

どうか短い蝶生を謳歌してほしいものです。

 

蝶 羽化したばかり