ショートエッセイ いきもの語り

年老いた猫が寝たきりになり、見送りました。3年間このブログを開くことを躊躇っていましたが、コロナ禍で感じ続ける生きていることの奇跡と感謝をあらためて綴ってみようと思います。

鉢の中で

サクラの号令で、待っていましたとばかりに足下でも一斉に花が咲きました。
ヒトリシズカという名前の花も、ひっそり咲いています。
 
春を待っていたのは私も同じです。
今年は特別な理由がありました。
ベランダでバラを3鉢育てているのですが、そのうち1本が闘病中だったのです。
原因は、土の中のコガネムシの幼虫でした。
その1本を鉢植えにした時使った有機をうたう土の中に数匹紛れ込んでいたようです。
なんとなく、幼虫っぽいものがいるなとは思っていたのですが、
有機」の力を信じていたので、きっともう命がなくなって、これも土の一部になるのだろうと思っていました。
 
不自然に葉を落としたバラを土から出してみると、見事にヒゲ状の根がすっかり食べられてしまっていて、バラは、ただの棒になっていました。
十数年前近所の花屋さんで買った1本の花から増えた特別なバラです。
簡単に死んでしまったとは思いたくなくて、春が来ても葉を出さなければ処分を考える。そう決めて、
毎日がんばれがんばれと声をかけて冬を過ごしました。
 
この数日、他の鉢はたっぷり葉をつけて、花芽も見られるようになりました。
間にある枯れた1本は、まだ棒に近い状態です。
でも、昨日、ようやく赤くて小さな芽が見つかりました。
待ち続けて、よかった。
 
閉じ込められた小さな鉢の中で生きるためにしたことなので、コガネムシには何の罪もないはずですが、ごめんなさい、今回は悪者にしてしまいました。
半分くらい根っこを残してくれればよかったのにね。
天然資源の限られた世界で生きるのは、なかなかにたいへんです。

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ヒトリシズカ