ショートエッセイ いきもの語り

年老いた猫が寝たきりになり、見送りました。3年間このブログを開くことを躊躇っていましたが、コロナ禍で感じ続ける生きていることの奇跡と感謝をあらためて綴ってみようと思います。

冬のココココ

夏はうっそうとした木々しか見えない近所の洋館の庭が、
冬場は恰好の野鳥観測ポイントになっています。
でも去年ほどあまりいろいろ見かけないなと思っていたら、野鳥に詳しい人が、
「今年は遅いみたいですよ」
と、渡りが遅れていることを教えてくれました。
 
去年ここで、初めてキツツキが木をつついているのを目撃しました。
日本でいちばん小さなキツツキ、コゲラです。
コゲラは渡鳥ではないのですが、木の葉の多い夏場に出会うことは稀です。今年一度高木の上を飛ぶシマシマ模様を見かけただけです。
 
鳥を見つける基本の技は、耳を澄ますことだといいます。
鳴き声を頼りに目を向けるのがいいとか。
この日は少し風があったので、常緑樹の葉が擦れる音や、枝がぶつかる音もしていました。そんな木々の音の中に、かすかにココココと聞こえるものがありました。
あれは、確か去年の冬に聞いた、コゲラのドラミング。
いるはずです、このあたりに。
でも「さわさわ」の中の「ココココ」がどこから聞こえるのか。
近いと思うんだけどな〜と思って左側をぐるりと見渡したら、すぐ脇の木の幹で作業に励んでいました。
あら、こんなところに。
近くにいたのに、うるさくない、風に紛れてしまうようなココココ。
無心に仕事をしていたようなので、じっくり観察させてもらいました。
 
それにしても、どうしてそこに虫がいるとわかるんでしょう。
当て推量であちこちつつき続けているんでしょうか。
どちらにしても、その生き物なりの習性は、ほんとうに不思議なものです。
ふと目線を地面に送ると、ツグミらしき鳥が、大きなエサを飲み込めず、口を最大に開いたまま躍起になって首を前後に振っています。
必死な形相は滑稽で、思わず笑ってしまいます。
今年も野の鳥たちとの出会いが楽しみになってきました。

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コゲラ