ショートエッセイ いきもの語り

年老いた猫が寝たきりになり、見送りました。3年間このブログを開くことを躊躇っていましたが、コロナ禍で感じ続ける生きていることの奇跡と感謝をあらためて綴ってみようと思います。

鳥の巣 Bird's Nest

鳥の巣が落ちていました。
こぶしぐらいの大きさの、小さくて、軽そうな巣です。
強い北風が樹上から吹き飛ばしたのではないかということです。
 
メジロの巣、なのだそうです。
梅の花が少ずつほころび始めるこの時期、活発に動いているメジロ。何をしているのかと思っていましたが、建材をさがしているのかもしれませんね。
でも、いったいこの材料は何なのでしょう?
どうやってお椀の形を組むのでしょう?
コケは?どこかから拾ってきて貼りつけたりするのでしょうか。
見事な形状です。
中にひっかかっている羽毛がないことから、製作中だったのではないか。
コナラの枯葉が一枚入っているだけなので、落ちたばかりではないか。
そんな話をしていました。
 
この巣を持ち上げようとした人を
ダメだよ素手で触っちゃ。
と周囲の人たちが制しました。
以前スズメの子を素手で抱えて道路から逃した時、友人からちゃんと手を洗うようにと忠告されたことを思い出しました。
野生の生き物と人との間にある線をなくすと、どちらかが思いがけず傷ついてしまいます。
生き物としてのヒトは実はとても弱くて、野生の生き物を犠牲にすることでしか生き続けられないのかもしれないとふと思いました。
 
できればこんどは、樹上にある巣を見つけて、
これから繁殖期に入る巣の中で新しい命が生まれる様を
遠からず近からずの距離で観察したい。
同じ場所に鳥と人が同時に生きていることを、せめて客観視して楽しむことだけでもと願っています。

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メジロの巣