ショートエッセイ いきもの語り

年老いた猫が寝たきりになり、見送りました。3年間このブログを開くことを躊躇っていましたが、コロナ禍で感じ続ける生きていることの奇跡と感謝をあらためて綴ってみようと思います。

猫と自傷行為

これは、老猫に限った話ではありませんが、

猫にも自傷行為があるというのをご存じでしょうか?

 

さくらは、非常に神経質で、自分を可愛がってくれた先輩猫と飼い主の私以外の人には決してなつきませんでした。

逆に言えば、飼い主の都合により18年弱の猫生の中で、7回も転居を強いられましたが、

嫌がるそぶりを見せることなく飼い主にちゃんと着いて来てくれました。

その転居の中で、彼女のそれまでの暮らしと比較してかなり狭い部屋で暮らさなければならなくなった時、彼女のそれは始まりました。

お腹がつるっつるになったのです。

皮膚病かと思ったのですが、様子を見ていると、自分で舐めてお腹の毛をむしりとってしまっていたようです。

 

それが、不思議なことにぴたりと止んだことがありました。

かなり広い部屋に一時的に住むことになった時のことです。

どうやら彼女の毛むしりは、15畳ほどが見通せる部屋では起こらないようです。

狭い部屋では息がつまるように思っていたのでしょうか。

単純に面白くなかったのかもしれません。

自分の毛をむしることが彼女の気持ちを落ち着かせる行為になっていたようです。

 

そんな気持ちを私が察することができるようになったのは、

「人間と動物の病気を一緒にみる〜医療を変える汎動物学の発想」という本を読んだからです。

さくらの過剰グルーミングは人間で言えば自傷行為

自殺を試みているわけではなく自分を少し傷つけることで安心感を覚えるという行為だというのです。

晩年のさくらは、お腹だけでなく、両脚の内側もつるつるになっていました。

ほかは変わりません。食事を拒否するでもなく、なつかないわけでもない。

わざと粗相をしたりするということもありません。

せっせと自分が気持ち良いと思う行為を繰り返していたのです。

 

猫ちゃんのお腹がある日つるつるになってしまっていることに気づく飼い主さん、

びっくりしなくて大丈夫です。

多少見苦しいな〜と思っても、許してあげてください。

その子はその子なりに、自分の気持ちのバランスをとっているのです。

我が家の場合、可能なら、もっと広い部屋に住んであげたかったのですが、人間側の事情もあります。

その子の癖を認めてあげるしかなかったというのが実情です。

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